学府について

白地図に色を塗る
澤藤りかい 包括的東アジア・日本研究コース

 私の専門は自然人類学、生物考古学です。もう少し詳しく言うと、遺物などの古いものの生体分子(DNAやタンパク質)を調べる研究をしています。自分でも文系か理系かよく分かりませんが、考えてみたら私は昔からそんなことを目指して勉強と研究をしてきたのでした。高校の頃、理系か文系かを決める時にも、両方の分野に興味があり、ただ実験は高校や大学でないとできないから、という即物的な理由で理系を選択しました。大学に入ってからも進学に悩み、文化人類学に興味が出てゼミをとったりしていたのですが、文系の学生たちの知識や議論のレベルに圧倒され、「私は文系に進んでもこのレベルにはなれない。それなら理系の方法で文化人類学にアプローチしよう」と考えてそのまま理系に進学しました。ただ当時はどうやってアプローチできるのかわからず、ひとまず人間の研究がしたいということで学部では生物学、大学院からは自然人類学を専攻していました。大学院では主に古人骨からのDNA分析を扱う研究室にいたのですが、過去の人の文化や病気にもっとアプローチできないかと思い、古人骨のタンパク質を調べたり、歯石や遺跡の土壌など、風変わりなものから過去のDNAを抽出して食べ物を調べたりしてきました。生きている人を扱う文化人類学とは全く方向性が異なりますが、「理系の方法を用いて(過去の)人類の文化にアプローチする」という意味では、大学生の時に目指していたものに近づいてきたのかなと思います。

 九州大学に来てから、他の先生や学生さん達と話す中で、「なぜ私は研究を続けているのだろう」とふと思う時があり、最近そのことをよく考えています。私の場合、何かを極めたいというより、世界をよく知りたい、なんでも知りたいという好奇心に駆られてここまで来てしまった、という気がします。学生の頃、海外に旅行に行って、実際に現地の人や物を見ることで、それまでぼんやりとしていたその土地の知識が、白地図に色を塗ったように生き生きとして感じられることがありました。文献やデータを調べて、自分の知識や世界の解像度が上がる、そういう瞬間が好きで、研究を続けているのかなと思います。自分の好奇心や興味の発散はコンプレックスでもあるのですが、それでもこの性質を受け入れて、健やかに楽しく研究と教育ができればいいなと思います。

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