地球社会統合科学府は設立からまだ日が浅く、2015年度末、2016年度末に、修士課程、博士後期課程それぞれの最初の修了者を輩出した新しい大学院です。もっとも、その前身である大学院比較社会文化研究科・学府は20年以上に及ぶ歴史を有していました。修士号取得者は1010名、博士号取得者は343名(論文博士48名を含む)に上り、国内外の大学・研究所を含む教育研究機関、企業、民間組織、自治体、国際機関など、様々な分野で活躍しています。地球社会統合科学府も、この限られた期間に309名の修士号取得者、65名の博士号取得者(論文博士3名を含む)を世に送り出してきました。
他の多くの大学院とは異なる地球社会統合科学府の特徴は、「地球社会的視野に立つ統合的学際性」という教育理念に現れています。すなわち、一つの専門分野に閉じこもるのではなく、私たちの足元から地球大のイシューにまで視野を広げ、その諸課題を限られたディシプリンをはみ出し、文系・理系の枠を超えた統合的な学際性に立脚して究明する高度専門職業人、研究者を養成すること、これが本学府の目標です。
そのため、とりわけ修士課程ではコースワークを重視し、基礎から応用への積み上げをも意識した多彩な授業科目をそろえ、諸課題に学際的にアプローチできる能力・スキルを身につけられるカリキュラムを提供してきました。2020年度からは、本学府の看板である必修科目「地球社会統合科学」を大学院版のPBL(Problem-Based Learning)科目に組み換え、専門分野の異なる学生がグループを作って課題に協働して取り組み、統合学際的アプローチを実践的に学ぶ授業を導入し、好評を得ています。
もちろん、本学府でも学位論文の執筆と学位の取得は学習・研究の一つの到達点を示すものとして重要です。ただここでも、個々の学生が設定する研究課題には、他のディシプリン優先型の大学院には見られない広がりとユニークさ、分野横断型のテーマが散見されます。学府を構成する教員も多様な学問分野を専門とし、学際的な研究指導を実施します。
なお、地球社会統合科学府は、発足と同時に二つの大きな教育研究事業を合わせて展開してきました。「統合的学際教育を基盤とする高度グローバル人材養成プロジェクト」と「フューチャーアジア創生を先導する統合学際型リーダープログラム」です。いずれも、事業としては終了しましたが、そこで繰り広げられた数々の国際シンポジウム、ワークショップ、国内外でのフィールド調査実習等は本学府の学生を有為な人材に育成するうえで大きな力となりました。
2021年4月、上記二つの事業の成果をも受け継ぐ形で、「未来共創リーダー育成プログラム」がスタートしました。九州大学の複数の学府が協力して設置した文理横断プログラムで、地球社会統合科学府が基幹学府を務めています。本学府の学生は、このプログラムの学生にもなることで、より学際的、実践的に研究活動の世界を広げることができるでしょう。本プログラムの履修にも道を開く地球社会統合科学府への入学をぜひご検討ください。
地球社会統合科学府長
松井 康浩