学府について

言語変化の「足跡」をたどる
朱 冰 言語・メディア・コミュニケーションコース
言語文化研究院 言語環境学部門

 2024年6月に本学府に加えさせていただきました朱冰(シュヒョウ)と申します。中国山東省出身で、大学卒業までの間、「孔孟の郷」とも称されるこの地で過ごしてまいりました。多くの留学生と同じように、大学院進学を機に来日し、気づけばすでに13年間が経っています。名古屋大学で6年半の留学生活を送り、その後関西学院大学にて2年間務めたのち、2020年4月にご縁をいただき、本学言語文化研究院に着任致しました。東海から関西、そして九州へと日本国内でずっと西へ移動してきましたが、地理的には実は母国の出身地に近づいています。現在は、主に基幹教育の中国語教育に携わっています。着任早々にコロナのパンデミックに見舞われましたが、多くの試練を学生と共に乗り越え、今も充実した教育・研究の日々を送っています。

 私の専門分野は言語学で、特に認知・機能主義的言語学と言語類型論のアプローチから、文法的変化、いわゆる「文法化」に関する研究を行っています。主な研究対象は母語である中国語ですが、日本語をはじめとする他言語との対照研究にも関心を持っています。言語は絶えず変化するものと言われていますが、その構造や意味機能がどのようなメカニズムに基づき、どのような経路で変化してきたのかを追うことは、謎解きや宝探しのようで、常にワクワクしながら取り込んでいます。このような「足跡」をたどるプロセスは、言語変化の規則性を見いだすものだけではなく、人間の認知能力の解明にもつながると思われます。

 これまで主に中国語のモダリティ表現に焦点を当て、その多機能性、とりわけ典型的なモーダル的意味(例:可能性、必要性、必然性)から拡張した意味機能(例:接続的機能、談話的機能)について、認知的構文文法と文法化の観点から記述と説明を行ってきました。モダリティ表現は、しばしば人々の「心的態度」を表すものとされ、その多様な意味機能と発達・変化に惹かれ、一貫した研究を進めています。 

 また、これまでの研究では、言語類型論の視点も積極的に取り入れてきました。どの言語を研究対象にするにしても、個別言語の詳細な記述的研究が特定の言語現象に対する理解を深める一方で、その現象を世界の言語全体の中で位置づけて観察し、言語間の共通性と多様性を考える視点も欠かせないと考えています。

 最後に、本学府での研究指導について少し述べさせていただきます。大学院への進学は、将来の計画や自分の適性、経済的状況などを総合的に判断して決めるべきものです。特に、人文系の研究環境が必ずしも恵まれているとは言い難い現状において、博士課程への進学は、慎重に熟慮し、決断したからには全力で研究に取り組む覚悟が求められると考えています。教員として、一定の学力はもちろん、自分がやりたいことをしっかりと見いだし、それを遂行する意欲を持った学生と出会い、全力でサポートしていきたいと思っています。

担当科目: