研究展開例
石垣島 屋良部沖海底遺跡
琉球列島ではじめての四爪鉄錨や沖縄県産陶器壺が発見された石垣島西岸の屋良部沖は,17世紀後半~18世紀に港として利用されていたことが古文書の記録に残されています。石垣島西海岸の外海に面したこの場所が,なぜ港として利用されたのでしょうか。 水中考古学を陸上の考古学と同様のレベルで行うためには,海図や従来の海底地形図以上の精度を持つ地形図が必要となります。我々はマルチビーム測深によって石垣島屋良部沖の海底遺跡の精密海底地形図を作成しました。 詳細な地図ができると,海底に散らばる遺物の分布を正確にマッピングすることが可能となり,陸上の遺跡で実施されている考古学調査と同じ精度で水中文化遺産の全体像を可視的に把握することができます。そこには古文書に錨のロープをすり切ってしまうと記述された隠れ根が表れ,2つの四爪鉄錨が残されていることが発見されました。そして,この隠れ根と沿岸のリーフに囲まれた湾は港にするには絶好の場所であり,その結果遺物が大量に残されたことが明らかになったのです。 港としての利用に適した地理的条件は以下の3点です。 1)海上からみると一見単調に見える海岸であるが,「隠れ根」の存在によって風下に位置し波浪から守られた湾入部が形成されていること。 2)港の中心部とみられる壺が集中する海域は,岸側に水深2m~20mに達する急崖が存在し,岸壁としての利用に適していること。
3)屋良部崎南西側の海岸ではサンゴ礁の幅が狭いため,海底の岸壁状地形が海岸からわずか200mの距離にあり,港としての利便性が確保されていること。
(東海大学,沖縄県立埋蔵文化財センター,大阪府教育庁,産業技術総合研究所との共同研究) Ono, R., Katagiri, C., Kan, H., Nagao, M., Nakanishi, Y., Yamamoto, Y., Takemura, F., Sakagami, N. 2016. Discovery of Iron Grapnel Anchors in Early Modern Ryukyu and Management of Underwater Cultural Heritages in Okinawa, Japan. International Journal of Nautical Archaeology 45, pp. 75-91.
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沖縄県立博物館・美術館 開館10周年記念特別展
「海の沖縄 – 開かれた海への挑戦 -」展示模型
縮尺:1/500, 深度:1/200
造形:九州大学 浅海底フロンティア研究センター
彩色:沖縄県立芸術大学
与那国島 海底地形に関する調査研究
マルチビーム測深調査により完成させた与那国島南岸の海底地形図を基にした、潜水調査の模様
サーウェスヨナグニYouTubeより
「与那国島 アンカー 2019.03.06」