研究内容 Ⅲ

装置を用いた試料観察・分析

ボーリングなどによって採取した試料のうち,微小領域の観察を必要とする試料については,走査型電子顕微鏡 (SEM)を使って観察を行います。走査型電子顕微鏡にエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を搭載した装置をSEM-EDSと呼びます。電子顕微鏡で微小領域の観察を行うとともに,EDSで試料からの特性X線を分析することで,試料を破壊することなく観察部位の元素分析を行うことができます。私の研究室では,サンゴ礁の岩石や未固結の砂を試料とするため,非導電性試料を非蒸着でそのまま観察でき,微小領域の元素分析まで可能な低真空SEM-EDS (日本電子 JSM-6390LA) を導入しています。径76 mmの大型試料ホルダーに試料を載せて観察することができますが,視野探しが容易になるよう,3軸モーター駆動ステージおよび画像を基に視野移動を行うステージナビゲーションシステムを装備しています。  このほか,試料の構成鉱物を明らかにするためX線回折装置(リガク Miniflex Ⅱ)も稼働させています。

低真空SEM-EDS(日本電子 JSM-6390LA)
X線回折装置(リガク Miniflex II)

電子顕微鏡でサンゴ礁の砂を観察する

サンゴ礁上やサンゴ礁海岸の海浜に堆積する砂は,主にサンゴ片や貝殻片などの生物骨格の破片で構成されています。砂の中には,有孔虫という石灰質の殻をもつ原生動物も多く入っています。一般に「星砂」「太陽砂」などと呼ばれる大型底棲有孔虫です。電子顕微鏡で見るとそれぞれの特徴がよくわかります。

© HIRONOBU KAN
有孔虫の電子顕微鏡写真
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Calcarinaの断面

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有孔虫表面の微細構造。

電子顕微鏡でサンゴ礁の固結堆積物を観察する ~マリンセメントによる海中膠結作用~

サンゴ礁堆積物は,初期の空隙が埋められることによって堆積時より緻密な石灰岩へと変化していきます。サンゴ礁の固結堆積物を観察すると,以下の2種類の鉱物からなるマリンセメント(海中で成長するセメント)が粒子間の空隙を埋めている様子を観察することができます。1) 高マグネシウム方解石 (high-Mg calcite) セメント:粒子間の空隙を埋めるように成長し,強固な岩石をつくります。波浪の力を強く受ける場所でよく発達します。2) あられ石(aragonite)セメント:あられ石の針状結晶が粒子間に成長します。また,造礁サンゴ骨格内部の空隙は,周囲の骨格 (共骨) から伸長するあられ結晶が埋めているところも観察することができます。電子顕微鏡で観察しながら,EDSを用いて各部の元素分析や視野全体の元素マッピングを行うことができますので,マグネシウムの有無を基にこれらを識別することが可能です。また,構成鉱物はX線回折装置で明らかにすることが出来ます。

このような試料分析手法は,統合国際掘削計画(IODP) #325グレートバリアリーフ掘削で私が担当した堆積岩の観察・分析においても,強力な研究ツールとして活躍しています。

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