研究内容 Ⅳ

太平洋・インド洋の環礁国の地形と災害 ~サンゴ礁から地球環境と地域をみる~

太平洋・インド洋には,サンゴ礁の上にできた低平な洲島だけで国土が成り立っている環礁国があります。私はこれまでにキリバス共和国,ツバル,マーシャル諸島共和国,モルディブ共和国といった環礁国でフィールド調査を行ってきました。これらの国々は温暖化による海面上昇に伴って海岸侵食や水没が危惧されています。また,インド洋のモルディブ共和国では2004年インド洋大津波で大きな被害を受けました。環礁国にとっては国土の全てがサンゴ礁によってつくられる地形です。これらの国々の自然環境とその成り立ち,災害の状況,そこに住む人々の生活についてフィールドワークを基に総合的に考えたとき,地球環境変化に伴う問題とともに,グローバル化の進展に伴う社会経済活動の変化など地域が抱える問題が見えてきます。すなわち,グローバルな環境問題と地域の問題が複合して災害が発生していることが分かります。

私の研究室では,環礁国の地形の成り立ちについて,ボーリング調査や水中露頭調査を含めた様々な手法で調査を行っています。また,インド洋大津波などの災害が,サンゴ礁の島々やそこに生活する人々にどのような影響を与えたのかなど,自然と人間の関わりについての調査も行っています。2004年インド洋大津波の直後には,モルディブ共和国の43島で被災調査を行いましたが,環礁における津波の挙動はこれまでに記載されていませんでしたので,研究結果は今後の環礁洲島の防災に役立てることができると考えています。

© HIRONOBU KAN
写真Ⅳ-1 海岸の縁まで住居が建ち並ぶマーシャル諸島共和国の首都マジュロ環礁 (1999年9月撮影)
© HIRONOBU KAN
写真Ⅳ-2 ビーチを越えて島内に進入する海水 (モルディブ,ビリンギリ島南部にて, 2005年8月20日13時24分撮影)
 モルディブ共和国の首都マーレの西隣に位置するビリンギリ島は,人口約7000人の住宅地である。島の高度は満潮時の潮位(高潮位)より50cm程度高い。しかし,ときおり発生する異常潮位の際には,海岸沿いの道路などに海水が進入する。(『温暖化と自然災害-世界の六つの現場から』, 古今書院,菅執筆部分より)

詳しくは以下をご覧ください

  • 菅 浩伸 (2009) モルディブ諸島にみる環礁立国崩壊の危険性 -災害と開発の連鎖-. 日本地理学会災害対応委員会・平井幸弘・青木賢人編 『温暖化と自然災害-世界の六つの現場から』, 古今書院, p.59-84.
  • Kan, H., Ali, M., Riyaz, M. (2007) The 2004 Indian Ocean Tsunami in the Maldives: scale of the disaster and topographic effects on atoll reefs and islands. Atoll Research Bulletin, No.554, p.1-67.
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