エズラ・F・ヴォーゲル先生のご逝去に際して 

On the passing of my former boss, Professor Ezra F. Vogel

2020年12月20日、敬愛する私の元上司、E. F. Vogel(傅高义、ハーバード大名誉教授)がマサチューセッツ州ケンブリッジにて逝去されました。享年90歳。本来であればとっくに仕上げていたであろう胡耀邦の伝記の執筆に燃えている最中でした。

先生が胡耀邦を仕上げられなかったのは、2012年の尖閣諸島問題で日中関係が極度に悪化したことに心を痛め、『日中関係史:1500年の交流から読むアジアの未来』(China and Japan: Facing History, 2019) の執筆を優先したためです。日本と中国の双方の真の友人として、私たちがなんとか共存の道を探し出せるよう、最後まで心を砕いてくださいました。頭が上がりません。でも、普段のヴォーゲル先生は近所のおじいちゃんという感じで、2世代分年下の私にも全く対等に接し、常に励ましてくださいました。茶目っ気たっぷりでよく笑う方でした。「実るほど こうべを垂れる稲穂かな」という言葉が頭に浮かびます。ぜんぜん偉人らしくない偉人でした。

ただし、先生は対外的なソフトさと裏腹に、実際には学者として生きる責任感や使命感を強く意識されていました。社会に貢献していくため、ご自分への要求はとても厳しかった。先生をそばで見ていて私は、この人、他人にはとても優しいのに、なんで自分のことはそこまで痛めつけるの、とよく思っていました。でもそれは、先生が私に与えてくれた財産です。彼にもらったスピリットを胸に、追いつけない偉人の後を追って、私もまた走り続けます。

先生、しばらく休んでから、天国で大好きな研究を続けてください。次に会う日まで、さようなら。

カテゴリー: Uncategorized パーマリンク