2002年度前期講義のイントロダクション
■N.A.Chagnonとヤノマミ民族誌について
・人類学における戦争をテーマとした民族誌のひとつの典型、'warlike savage' 像を強調する民族誌。1968年に第1版が出版され、1997年までに第5版。調査は現在まで継続され、加筆・改稿が重ねられている。
・1960年代のヤノマミの戦争と暴力、マチズムを描写→人類学における「戦争好きの野蛮人」像の形成に多大な影響を与えた。
・逆に、「平和で高貴な野蛮人像」をこの時期につくるのに貢献したのは、ブッシュマン(トーマスなど)やピグミー(ターンブル)など、アフリカの狩猟採集民研究であるという側面がある。
・アフリカとアメリカ(とくに南米)の狩猟採集民研究の対比:
少産少死の「豊かな」ブッシュマン←→アチェやヤノマミの多産性、嬰児殺し、棄老、戦いと暴力。■Chagnonの研究視角の特徴「アチェの生活史」(Hill and Hurtado 1996, 'Ache Life History: The Ecology and Demography of a Foraging People, New York: Aldine de Gruyter.)を描いたヒルとフルタード(1996)は、ナンシー・ハウエルのブッシュマン研究とは多くの点で対極的なアチェの人口史を示し、狩猟採集民像を一般化することの困難さを強調している。
*「アチェの生活史」冒頭のエピソードを示しておきます。興味深いヒントがたくさんこの中に含まれていますので、ぜひ読んでみてください。
・Chagnonの戦争観の変遷について (Otterbein 1994: 175-176)
1960年代:政治的統治(パワーバランスの強調)・さまざまな試み:
1980年代:女性の獲得(←包括適応度);親族による血讐(←進化心理学)
1990年代:資源の地理的偏在性(←生態学)ヤノマミのビデオ映像の作成
フィールドワークにおけるヘリコプターの使用
GPS・リモートセンシングデータの利用
インターラクティブCDROMの作成(1997年版とともに出版)
・Chagnonと進化生物学・文化人類学と生物学
■人類史、ヒューマン・エコロジーにとっての論点
・集落パターンにおける戦争の影響■'Darkness in El Dorado' とChagnonについて
・戦争の激しさと女児殺しによる人口性比の関連性(cf. Daily & Wilson:女児の選択的な殺害は、進化生物学によって説明することは今のところ難しい)
・資源のキャパシティは人口分布の直接要因とはならない?(cf. Divale & Harris)これについては、以下のHPが参考になります。**UCSB Anthropology Web Site
http://www.anth.ucsb.edu/
http://www.psych.ucsb.edu/research/cep/eldorado/**Public Anthropology HP
http://www.publicanthropology.org/
http://www.publicanthropology.org/Journals/Engaging-Ideas/T-of-C.htm