九州大学大学院 地球社会統合科学府 Graduate School of Integrated Sciences for Global Society

卒業生の方

新任教員紹介

東アジア先進大都市における「サービスハブ」への着目

ヒェラルド・コルナトウスキ

包括的アジア・日本研究コース 比較社会文化研究院

2018年4月より、比較社会文化研究院に着任したヒェラルド・コルナトウスキ(Geerhardt Kornatowski)と申します。これからよろしくお願いいたします。ベリンゲンというベルギーの炭鉱町で生まれ、もともと移民労働者が多く住んでいていたため、多文化的な環境で育ちました。その影響か、小さい頃から外国語や共存社会の在り方に強い関心を待っており、ベルギーのルーヴェンカトリック大学に入学した時は、比較的マイナーな学問である日本学を選びました。3年生になってから、2週間のホームステイで初めての日本へ。その場所はハッセルトの姉妹都市である兵庫県伊丹市でした。阪急電鉄によって開発された郊外住宅地と、そのターミナルである大阪市の梅田に憧れ、日本社会は非常に平和かつ現代的だなと思っていました。どうしてもこの街に戻りたいと思い、その翌年1年間関西大学へ留学しました。その時、初めて大阪の「ミナミ」というエリアへ足を運び、日本最大の寄せ場と呼ばれる西成区のあいりん地域までも散策して、とにかく最初持っていた日本社会のイメージとのコントラストが非常に印象的でした。おそらく、その時初めて都市社会の空間性に興味を示持ち、ベルギーで卒業してから再度日本へ行き、2004年より大阪市立大学大学院に入学し、人文地理学を専門にしました。

幸運にも、修士課程に入ってから、指導教員の水内俊雄教授の基盤研究プロジェクトに参加させていただき、当時東アジア各地で社会問題として認識されるようになったホームレスに対する支援制度の比較研究に着手しました。どこへ行っても、大阪のあいりん地域のように、日払いの賃貸住宅や日雇い労働が集中しているインナーシティ地域が何らかの形で存在していることに着目し、こうした地域を支援拠点にしているボランティアセクターによるホームレス支援の発展過程を修士論文でまとめました。
 そして、同大学の博士課程に進学し、香港の事例に絞り、より詳細なアプローチをかけることにしました。博士論文のテーマとしては、サービス・不動産・金融業を経済的基盤に転換した香港の都市空間構造の変容から総括的に広義のホームレス問題を分析し、とりわけ、住宅市場の変動過程、地域社会の変容と、そしてそれに伴うボランティアセクターと行政とのパートナーシップによる新たな福祉的ガバナンスに焦点を当てました。
 博士号を取得したあと、特任教員としてとして大阪市立大学都市研究プラザに着任し、積極的に理論研究に取り組み、香港とシンガポールにおける社会的排除問題の研究に着手しました。とりわけ、両都市が世界先進地域の中で最も激しい格差社会を抱えているコンテクストでは、生活困難者支援の在り方をいかに捉えるべきか、適切な住宅資源の確保にいかに取り組むべきか、このような問題意識を持ち、両都市における今後の生活困難者向け支援の在り方を考察するようになりました。

より理論的な研究に専念した結果、現在は、「サービスハブService Hub」概念の観点から、シンガポールにおける外国人労働者問題と香港・マカオにおける生活困難者問題をめぐるアーバンガバナンスについて追究しています。サービスハブとは、先述した生活困窮者に対する(NPOなどによる)支援拠点が集中しているインナーシティ地域のことを指しており、その包摂的なポテンシャルを検討しています。とりわけ、欧米先進国のように福祉国家の背景を持っていない香港とシンガポールでは、こうした地域が今後どのような都市空間的な受け入れ機能を果たし、またローカルな(社会的)資源を活用することにより、人を都市社会へ包摂させる支援及び、人が自分を包摂していく非支援的な動き、この二つの観点から考察を行っているところです。

上述した社会的問題意識から「都市空間と社会」という個人ゼミを担当しています。教育アプローチとしては、受講生に都市社会の基本的な理解を深めてもらい、現代世界と特にアジアにおける国際化や移民問題、少子高齢化、過疎化とコミュニティ課題というさまざまな問題について、「現代地域」をキーワードに、思考力・判断力が身につくように進めています。実際にこうした諸課題に馴染んでもらうために、フィールドワークも実施しています。このように、実際にフィールドに出て、世界の良い部分も悪い部分も知るチャンスが得られます。ご関心のある方ぜひともご参加ください。お待ちしております!


プロフィール
担当科目:都市空間と社会、総合演習(包括的アジア・日本研究コース)他