九州大学大学院 地球社会統合科学府 Graduate School of Integrated Sciences for Global Society

卒業生の方

新任教員紹介

オーストラリア家族をめぐる政治

藤田 智子

社会的多様性共存コース 比較社会文化研究院

比較社会文化研究院に着任しました藤田智子と申します。幼いころから引っ越しが多く、海外で暮らした経験もありますが、九州で暮らし、働くのは初めてです。また、大学院で教えるのも初めてなので、今まで以上に頑張りたいと思っています。

私の専門は家族社会学・ジェンダー論・オーストラリア研究です。「家族」とはなにか、「家族」とはどうあるべきとされているのかという問いのもと、オーストラリアの家族(に関わる)政策の分析を行うことで、近(現)代社会における国家(state)・家族・ジェンダー・セクシュアリティの関係について考察してきました。特に国家や専門家による上からの統制や介入が家族やジェンダー、セクシュアリティのあり方に与えた影響を検討しています。近(現)代社会において、社会や政府に自らのライフスタイルが「家族」と認められるか否かは、自己のアイデンティティだけでなく、必要な社会的支援やサービスを受けられるか否かにも関わる重要な問題です。われわれの生きる社会において、「家族」は社会的基礎単位とされますが、そこから排除されるとさまざまな差別や不利に直面することになります。一方で、オーストラリアにおいては「家族」が政治的なスローガンとして利用され、「家族とは何か」という家族のあり方に関する問いが社会政策上の重要な論点となってきました。オーストラリアの家族政策をテーマに、政策それ自体の分析のみならず、政策議論の中で家族はどうあるべきとされてきたのか、政策言説の分析を行うことが重要だと考え、研究を行ってきました。

博士論文においては、1970年代以降の家族政策、具体的には家族給付や出産手当、ワーク・ライフ・バランス政策、ひとり親への給付金、家族支援サービスに関わる政策などをめぐる議論を取り上げて、資料調査とインタビュー調査を行い、オーストラリア家族政策の歴史としてまとめました。それにより、オーストラリア家族政策を通して正当化されてきた家族のあり方や、オーストラリア社会におけるジェンダー関係を分析しました。さらに、社会政策をめぐる包摂と排除の問題をジェンダーやエスニシティ、階層の点から分析しました。

その後は、生殖技術・不妊治療の発展が家族のあり方に大きな影響を与えてきたことを考慮し、生殖医療に注目して、より長期的な視点からこれまでの研究を発展させようと試みています。具体的には、オーストラリアで初めて不妊症クリニックが設置された1930年代以降、「子ども/家族をつくる」のための技術が発展、浸透してきた過程を分析し、家族と生殖の社会史として再構成することを目指しています。それによって、不妊治療の技術開発と政府によるその規制がオーストラリアの家族、女性、セクシュアル・マイノリティにいかなる影響を与えてきたのかを明らかにすることが目的です。

研究を進めつつ、2016年4月から2017年9月までは、千葉県の明海大学に講師として勤務していました。非常勤で教えた経験はありましたが、常勤の教員として大学で教え、学科の運営に関わるのは初めてでしたので、多くのことを学びました。九州大学では大学院の授業が中心となりますので、学生さんと活発な議論ができることを期待しています。

社会学においては社会学的想像力が重視されます。それは、私たちの個人の生活とよりマクロなレベルの社会構造や歴史との複雑な関係を把握する力です。特に、家族やジェンダー、セクシュアリティについて学び、研究することは、私たちの身近な出来事にはどのような社会的・文化的・歴史的・政治的背景があるのか、より幅広い文脈のなかでそれらを捉えることの重要性を教えてくれます。「個人的なことは政治的」だからです。さらに、普段われわれが「あたりまえ」だと思っていること、あるいはあたりまえ過ぎて意識さえしていないことに疑問を持ち、批判的に考察することの重要性も教えてくれます。家族やジェンダー、セクシュアリティに関する問題に興味のある方には、ぜひ私の授業を履修してほしいです。さらに、オーストラリアに興味のある方も大歓迎です。私の授業では、ディスカッションを特に重視していますので、ぜひ積極的に参加してもらいたいです。教室でお会いしましょう。


プロフィール
担当科目:ジェンダー・家族論