九州大学大学院 地球社会統合科学府 Graduate School of Integrated Sciences for Global Society

卒業生の方

新任教員紹介

ミクロな化石とグローバルな気候変動史

林 辰弥

包括的地球科学コース/包括的東アジア•日本研究コース 比較社会文化研究院

比較社会文化研究院の地球変動講座に助教として着任しました林辰弥です。私は、大学〜大学院の学生時代を一貫して九州大学で過ごしたいわゆる“もろ九”で、特に修士・博士過程においては、当時六本松にあった比較社会文化学府(以下、比文)で過ごしました。博士の学位を取得した後には、国立科学博物館(東京—茨城)におけるポスドク、御船町恐竜博物館(熊本)における学芸員の職を経験し、8年ぶりに比文に帰ってまいりました。いずれは福岡に帰ってきたいと切望しておりましたので、今回このような機会をいただけたことを大変嬉しく、光栄に感じております。

さて、私の研究についてですが、一番の関心は6600万年前から現在にかけての新生代と呼ばれる地質時代において、微化石生物と地球規模の古気候・古環境がどのようにリンクしながら変遷してきたのかを明らかにすることです。その目的のもと、珪藻(藻類)の化石を主な研究対象として扱っています。珪藻は、マイクロメートル(1/100万メートル)サイズの単細胞生物であるにもかかわらず、非常に美しくバラエティーに富んだ殻を持ちます。また、海洋や湖における一次生産者として生態系の基礎を担うとともに、優れた環境指標生物であることも知られています。私は、その珪藻化石に魅せられて、形態や古生態に関わる情報をフィールド調査を通して収集してきました。

私が比文の大学院生であった時は、現在のネパール連邦民主共和国(当時はネパール王国)の首都カトマンズの全域をかつて覆い、現在は消滅してしまった湖(古カトマンズ湖)の珪藻化石を研究テーマとしました。珪藻群集が、湖の環境変化や地球規模の気候変動(氷期—間氷期サイクル)、およびインドモンスーン気候変動に対してどのように応答しながら変化してきたのかを解き明かそうとしたわけです。先行研究が全くない未開の地に、しかも普通であれば数名の珪藻の専門家が協力して取り組むような大きなテーマに一人で取り組みました。結果として、博士論文に非常に苦労し、まとまりに欠けたものとなってしまいましたが、その時に培ったチャレンジ精神は、今でも私の財産となっています。
それから十年ほど経過しましたが、古カトマンズ湖の珪藻化石は、相変わらず一人で細々と研究しています… 自信を持って述べますが、古カトマンズ湖の珪藻化石は興味深い研究テーマに溢れています。共同研究者を広く募集しておりますので、興味のある方はぜひご連絡ください。

元々は微化石学を専門としてきた私ですが、最近ではその枠を飛び越えて、古気候・古環境の復元研究にもチャレンジしています。地球上のあらゆる環境は、およそ300万年前に始まり現在にまで続く世界的な気候変動「氷期—間氷期サイクル」によって支配されています。その氷期—間氷期サイクルを詳細に復元し、誕生の謎やメカニズムを解くことで、近年の気候変動問題に対するヒントを過去から提供することが究極の目的です。そのためには、大陸氷床の成長と崩壊、海洋循環、それらが大気循環を通して世界各地に与えた影響など、様々な自然現象を明らかにする必要があります。そのため、私自身も新しい研究手法にトライしながら、様々なバックグラウンドもった研究者達と共同研究を行なっています。

比文や地球社会統合科学府には、それこそ様々な学術的バックグラウンドもった教員や学生の方々がおられますので、その中でどのような共同研究ができるか楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。


プロフィール
担当科目:総合演習(包括的地球環境科学コース)他