活動報告

2018年10月30日~11月2日【プログラム授業】フィールドワーク@対馬~生物多様性・史跡~
「歩くちから」授業:フィールドワーク@対馬が10月30日から11月2日の四日間にわたり実施されました。

「「歩く力」授業:フィールドワーク@対馬」が10月30日~11月2日の四日間にわたり実施されました。本フィールドワークは2018年度後期プログラムB群授業(フューチャーアジア連携プロジェクトⅠ)の一環として、学府生、その他の学部、学府生に開放する形式で実施されたものです。

 

アジア大陸と日本の中間に位置する対馬は日本の自然環境や生物多様性、文化や社会の成立過程において極めて重要な役割を果たしてきました。今回は対馬の希少野生動植物保全の現場や史跡を巡るフィールドワークを通じて、プログラムの掲げる「歩く力」を養うとともに、日本の生物多様性の保全やアジア諸国との今後の関係性について自ら「描く力」の涵養も目指します。今回のフィールドワークには、自然科学系から荒谷先生、人文社会系から田尻先生、鬼丸先生、推進室からホール先生、俵が参加し、大学院生として5名が参加しました。

 

10/30(火)夜9時に大学を出発、深夜0時のフェリーで福岡・博多港を出港し、翌31日のまだ暗いうちに対馬・厳原港に到着し、そのまま朝を迎えました。厳原港は対馬の南の玄関口で近世対馬藩の城下町です。朝食後、別便の飛行機の到着を待つ間、対馬藩主宗家墓所、万松院を訪れました。ここは元和元年(1615年)に創建された宗家累代の菩提寺で、同じく宗家の居城があった金石城跡(金石館)の西側にあります。

 

     

       博多港出港              厳原港の夜明け

     

     万松院(厳原町)             対馬藩主宗家墓所

 

厳原市街地を出発し、まず向かったのは上見坂公園です。ここは標高約380メートルに位置する公園で対馬の自然地形を特徴づける浅茅湾のリアス式海岸が一望できます。また、公園の後方には旧日本軍の砲台(堡塁)跡があります。

次に向かったのは、対馬南部の西海岸にある小茂田浜神社と椎根地区です。小茂田浜神社は元寇(文永の役)の際に元・高麗連合軍が上陸した地にあたり、毎年11月に行われる鎧武者の行列と海に向かって弓矢をかまえる「鳴弦の儀」が有名です。椎根地区の石屋根倉庫は対馬南部に多く分布し、高床式の倉庫の屋根を板状の頁岩で葺いた対馬特有の民俗文化財です。昼食は対馬の郷土料理「ろくべえ」を食しました。

 

     

   上見坂公園から浅茅湾を臨む        旧日本軍砲台(堡塁)跡

 

     

     佐須・小茂田浜神社            椎根・石屋根倉庫

 

10月31日(水)フィールドワーク第一日目のテーマは「自然」。荒谷先生のご指導のもと、午後からツシマヤマネコ野生順化ステーションと龍良山麓自然林のある内山地区に向かいました。ツシマヤマネコ野生順化ステーションは、島外の動物園で生まれたヤマネコが対馬の自然の中で生きていける(野生復帰できる)ように訓練をする施設として2012年より環境省による整備が進められているもので、一般には公開されていません。今回特別に入館を許可され、環境省職員の方からレクシャーおよび内部施設の説明を受けることができました。その後、龍良山麓自然林でのフィールドワークを実施しました。この日は浅茅湾の東と西をつなぐ場所に位置する美津島町大船越に泊まりました。

 

     

 ツシマヤマネコ野生順化ステーション       レクチャーの様子

 

     

    施設内(ケージ)の様子      龍良山麓自然林でのフィールドワーク

 

11月1日(木)フィールワーク二日目のテーマは「史跡」。田尻先生のご指導のもと、午前中に金田城跡(国指定特別史跡)のフィールドワークを実施しました。金田城は「かねだじょう」あるいは「かなたのき」と読み、地元ではこの山を城山(じょうやま)といいます。金田城は白村江の戦(663年)に敗れた大和朝廷により防人・烽の設置とともに九州・西日本各地に築かれた古代山城の一つで、その形態から朝鮮式山城とも呼ばれます。金田城は幕末・近代に再利用され、山頂には旧日本軍の砲台跡や関連遺構がのこります。

 

     

       金田城城壁            山頂から浅茅湾を臨む

 

昼食は浅茅湾の対岸、豊玉町に移動し、アナゴ料理を食しました(対馬はアナゴの出荷量が日本一だそうです)。その後、海中に伸びる鳥居が印象的な和多都美神社を見学し、一路対馬北部へ移動し、弥生時代の塔の首遺跡(上対馬町)や周辺の史跡などを訪れました。夕食は地元食材(とんちゃん)を使ったBBQを行いました。環境省職員やご家族の方々8名もお越しくださり、とても和気あいあいとした雰囲気の中で交流を深めることができました(一段と寒い夜でしたが部屋にはオンドルがあり暖かかった)。

 

     

    和多都美神社(豊玉町)          塔の首遺跡(上対馬町)

 

11月2日(金)、フィールドワーク最終日です。午前中に本日のメインである対馬野生生物保護センターを訪問しました。はじめにセンターに勤務する環境省職員の方からレクチャーをいただきました。ツシマヤマネコの問題だけでなく対馬の野生生物や環境保全全般にかかわる貴重なお話を伺い、質疑応答にも熱がこもります。その後展示施設を見学し、11時にセンターを離れ、一路厳原港を目指します。午後2時前に厳原港に到着し、荒谷先生の総括。その後は各自フェリー、飛行機などで帰路につきました。

 

     

    対馬野生生物保護センター        ツシマヤマネコ

 

実質二日半という限られた時間ではありましたが、現場で活動されている環境省の方々のレクチャーや、施設見学にあたっては普段はなかなか見る機会がない場所にも入ることができ、とても貴重な経験をさせていただきました。また、参加した教職員や学生もお互いに親睦を深めることができ、とても有意義な機会とすることができたように思います。ご協力いただいた皆様に対し、この場を借りて深くお礼申し上げます。

(文責:推進室K.T.)

 

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